ヤクザの家族になっちゃった!?


「もしかして…」

和泉は話の間に入ってきた。

「…そうだ。
和泉の話だ。」

そう。

緑子さんは、和泉の母親。

「いつも、幸せそうお前たちの話をしてたよ」

俺は、そんな家族が羨ましかった。

今でこそ落ち着いてきたものの、

昔は俺達と揉める奴らも多く、

組同士の争いが耐えなかった。

そんな頃だから、親父も俺の世話なんてしてられない様だったし

俺もくっついてはいかなかった。

正直、親父だって父親って感じはしなかった。

俺よりも仕事仕事で、忙しそうだったから。

俺はこの組を継がなければいけなくて、

その為に、色んな格闘技に挑戦した。

もちろん、それなりに強くならなければ辞めたりできない。

家での練習もキツく、

生傷が耐えなかった。

けど、それが当たり前になっていたから、

緑子さんが話す内容が物凄く新鮮だった。

遊園地や水族館、

海だってろくに行けない。

正直、下らないとさえ思ってた。

無駄なことで時間を潰すことが。


「じゃあ、私とのデート、楽しくなかったですよね…」

そう、落ち込むようにいった和泉。

それが不思議なものだよな。


「俺も、お前と一緒なら幸せなんだ。
楽しかったさ。」

そう、正直に伝える。

なんでこんな甘ったるいことをいってるんだろう。

そう、考えはするけど答えは決まってる。

俺は彼女を…。

最初は緑子さんの子供。

それだけの興味だったのに…。

俺が黙ると、不思議そうに見つめてくる。

…きっと、彼女が一番気になっていることは

母親が自分をどう思っていたか。

だから俺は自分の知っていることを、

素直に伝えた。



「俺の知ってる緑子さんは、お前を愛してたよ。」

そういうと、

和泉は静かに涙をこぼした。


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