ヤクザの家族になっちゃった!?

和泉side





「俺の知ってる緑子さんは、お前を愛してたよ。」


そんなことを言われるなんて、

お母さんがそんなことを言ってたなんて、知らなかった。

でも、愛しててくれたという事実が嬉しい。

唯一の、

この世に唯一の

実の母親は彼女だけだから。

段々とこぼれてくる涙を止めることなく、

龍之介さんに抱きつく。

ほんとは、怖かった。

あのときの、昔のおかあさんも、

私が嫌いだったんじゃないかって

そう思ったら。

怖くて、悲しかった。

殴られてもいい。

罵倒されてもいい。

ただ、嫌われたくなかった。

前は…ううん。きっと今も。

大好きなお母さんに。

けど、強がらないと、ダメだったんだ。

コウたちを守らなきないけない立場で、

泣いてたらきっと、コウたちが困っちゃうから。

泣かないように

強がって強がって

自分の感情にストッパーをつけた。

泣きたい

悲しい

寂しい

なんて、そんな感情を、

溢れんばかりのその感情を押さえつけるために。


溜めに溜めた感情が爆発したように

龍之介さんの胸元で泣いた。


龍之介さんは、ただただ静かに

私を包み込んでくれた。

そんな優しさが身に沁みて

また、涙が溢れてきた。

もう、何で泣いてるのかさえ、わからなくなるまで泣いて、

段々としゃくり上げるような感じに変わっていった。

もう、流しすぎて涙がなくなったみたい。


私はゆっくりと龍之介さんから離れる。

龍之介さんは涙のあとを指で拭き取りながら

「俺に頼れよ」

そう、言ってくれた。


私は泣きはらした顔で精一杯笑った。



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