ヤクザの家族になっちゃった!?



「ふーん。」


俺の話を聞き終えた柳は

なんだ、そんなことか。

とでも言いたげな顔で

そう言った。


「なんだ、その顔は。」


少しイラつきながらそう言うと


「だってさ、お前、少し考えてみろよ」


「は?なにを。」


「元々、離れるつもりだったんだろ」


「…あぁ。」


「だろ。
なら、お前はどうやって彼女にその事を告げるつもりだったんだ?」


「……口で。」

「それって結局彼女に今のお前と同じ思いさせるってことじゃねーの?」


「…そう、かもな。」

そうだ。

結局どっちかが辛い思いをするんだ。

「勘違いするなよ。お前だけじゃない」


「なにがだ。」


「お前はどうして決めてすぐにいえなかったんだ?」


「……。」

なんでかって…

そんなのわかりきってる。

伝えたら本当にそうなってしまいそうで

離れてしまいそうで怖かったから。

それを考えたら、辛くなったから。

…あぁ、そうか。

俺だけじゃないんだ。

和泉もきっと悩んだあげくの結論なんだ。

そうだよな。

うちにはこうたちもいる。

あいつらを置いてくなんて、

和泉が簡単に決めるわけがないんだよな。

それでも決めたんだ。

俺にそれを伝えたんだ。

そうとうの覚悟があったんだよな。


じゃあ俺は?

中途半端な覚悟で伝えることもできずに

バカみたいなことをいってしまったんだ

言葉で言わなきゃ伝わらないことだってあるのに。

俺は何を伝えたかったんだ。

別れよう?

離れよう?

ちがう、そんなんじゃない。

俺が伝えなきゃいけないことはー…

「わかったみたいだな」

柳はそう言って戻っていった。

俺は柳の背中にお礼をいうと


その場を後にした。



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