大人のEach Love



「和久井さん…?」


と私が再度問い掛けると、私の手を握る力を緩め『…ごめん。』と呟きながら言葉を続けた。


「キミがアイツの事を今でも好きなのは知っているけど…さ。」


「えっ…?」


友人や先輩以外、誰にも彼との事を話してはいないのに、和久井さんが知っているのはやはり噂話にでもなっていたのだろうか。

この暗闇の中で、和久井さんが見えているわけでも無いのに、私は和久井さんの方から顔を背けた。

噂話で知ったのなら、それはそれで仕方がない。
だけど、もしも…もしも彼が和久井さんに私との事を相談していたとしたら…。

別れた彼女との事で女性を怖いと言っていた彼が、私も彼女と同じ様にするかもしれないと不安に思っているのかもしれない。

彼は、口では『好きだ』と言ってくれたけれど、本当は迷惑に感じていたからだとしたら…。


きっと、私は…


…耐えられない。



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