大人のEach Love


やっぱり、ダメだったか・・・
この3日間の愛らしさ探求も意味無く終わったな・・・


「・・・いや、いいよ。何となく振られるって分かってたから。」


俺がそう言うと、彼女は深く下げていた頭を勢い良く上げて、目をまん丸にしてみせた。


「えっ?!や、ち、違うんです!!そのごめんなさいじゃないんです!!」


「え?・・・違う?」


「佐田さん・・・あんなにモテて、しかもイケメンなのに・・・私は地味だし。自分に自信がなくて、もしかして、からかわれてるのかな?って思っちゃって・・・。愛らしさが足りないとか・・・訳分からない事を言っちゃって・・・。それの、ごめんなさい。です。」


彼女はそこまで言い切った後、
『愛らしさが足りないのは、私の方なんです』
そう涙声で言葉を付け足した。


「ロリポップも、ビン底眼鏡も、なると柄のネクタイも・・・どれもいつもの佐田さんじゃなくて・・・。あれは、私の為だったんですよね?」


「見てくれてたんだ?!いつの間に・・・」


あ・・・
もしかして、この給湯室から?


そう思って、給湯室の戸のほうを一度見てから彼女の方に顔を向けると、彼女は目に涙をうっすらと浮かべながらも微笑んで、ゆっくりと頷いた。

どれも失敗に終わったと思っていた事だったのに、彼女は偶然にも見てくれていて、それがこんなにも嬉しいだなんて・・・。


「どれも面白かったし、可愛かったです。・・・けど。」


そこで言葉を区切った彼女は、俺の髪にそっと手を伸ばしてひとつまみしながら言葉を続ける。


「佐田さんの、この寝癖の方が、もっと可愛いですっ。」


背伸びをしながら俺に笑顔を向ける彼女、花子の方が100倍可愛いのに。


「あの・・・。保留なんかじゃなくて、私で良かったら・・・。」


その先の言葉は言わせない。




―――カタンッ



彼女を引き寄せた勢いで、彼女の腕が花瓶を掠めた。


・・・・花瓶に生けられた玉紫陽花。


その葉には、大小2匹のでんでん虫が仲良く並んで這っていた・・・・。





――― fin ―――
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