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「午後からなら、家から直接行けばよかったのに」
正輝が不思議そうに言ったあと、
「ひょっとして、僕に会いにきてくれたの?」
と言って笑った。

本気なのか冗談なのか分からない口調。


「は?んなわけないでしょ。調べ物があったの」
そう言って立ち上がり、本棚に歩いてゆく。

・・・不自然になってないかな。

正直なとこ、調べ物よりも正輝に会いたかった。

会って、昨日の出来事を聞いてほしかった。

違う。

これは、恋なんかじゃないし。

聞いてくれる人が、私には正輝しかいないだけ。

それだけ。


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