僕のonly princess
俺はいつもより遅く感じる電車のスピードに焦る気持ちを持て余しながら、流れる窓の景色に自分の決意を噛み締めていた。
たった三駅ほどの間、時間にすれば20分もないのに、焦る俺には十分すぎるほど長い時間だった。
清稜女学院の最寄駅のホームに電車が滑り込んで、ドアが開いた瞬間、俺はダッシュで改札口へ駆け下りた。
結花ちゃんといつも待ち合わせしていた時間を思い出しながら、この時間ならまだ結花ちゃんは学校か、ここへ向かっている途中のはず。
すれ違いになりたくなかったけれど、ここで彼女を待っているのもまどろっこしくて、俺は清稜女学院に向かうことにした。
駅前の交差点を走り抜けて、疎らな人の波を縫うようにして急ぐ。
その人波の中に、俺は会いたくて堪らなかった彼女を見つけた。
「結花っ!!」
俺の前を行き交う人波のその奥にいた彼女の名前を叫ぶように呼んだ。
今まで付き合う女の子の名前をこんな風に呼び捨てで呼んだことはない。
それは俺の勝手な線引きだった。
俺の心にいる唯一の女は佐知だけ。
佐知とは違う彼女達の名前を呼び捨てで呼ぶのは、どうしてもできなくて誰に何度乞われても、呼び方だけは変えられなかった。
だけど、今、俺は無意識に彼女の名前を『結花』と呼んだ。
それは今俺の心の中にいる唯一の女は佐知じゃなくて、『結花』だということ。
俺にとってたった一人の、特別な女(ひと)は結花なんだ。