僕のonly princess
「ただいま」
色々と他のおもちゃも持ってきて、俺の膝の上に座る理子ちゃんと遊んでいるとリビングのドアが開いて、父さんが入ってきた。
「おかえり」
そう言いながら父さんを振り返ると、その後ろに背の高い人影が見えて、俺はその人に小さく会釈した。
父さんの後ろから入ってきたのは理子ちゃんのお父さんの山岡さん。
そう、佐知の旦那さんだ。
パパの姿を見つけた理子ちゃんは俺の膝の上から立ち上がると、勢いよくパパの足元に駆けていった。
やっぱりパパがいいのか……とちょっと寂しく思う俺は、すっかり理子ちゃんのことが大好きになっているらしい。
そんな自分の感情と、山岡さんに抱っこされて嬉しそうに笑っている理子ちゃんの微笑ましい姿に俺の顔に笑顔が浮かぶ。
山岡さんを見てもあの頃感じた醜い感情は湧いてこない。
そのことに俺はまた安堵した。
「お帰りなさい。すぐご飯になるからお父さんも理(さとし)さんも着替えてきて」
キッチンから顔を出した佐知が笑顔で山岡さんを迎える。
それを見ても、心が痛むことはない。
逆に幸せそうな佐知の顔を見て、よかったと思えるくらいだ。
うん、大丈夫だ。
俺はもう佐知を悲しませることはないとはっきり言える。