僕のonly princess
「佐知子、これ」
山岡さんは理子ちゃんを抱いたまま、少しぶっきらぼうに手に持っていた荷物を佐知に手渡す。
それを受け取った佐知は「わぁっ」と声を上げて満面の笑顔になった。
「ソトワールのケーキね?嬉しい、食べたかったの!」
「向こうにいる時に散々言ってたからな」
佐知のお気に入りのお店のケーキを買ってきたらしい山岡さんは素っ気なく言っているけど、喜ぶ佐知を見る瞳は優しく細められている。
口数が少なくて、他人には少し冷たく見える態度も山岡さんの照れ隠しなんだろうな。
山岡さん達、家族三人の幸せそうな様子を見ていた俺は、その微笑ましさに頬を緩ませて
温かい気持ちになっていた。
それから大人数で食卓を囲んで、賑やかな夕食の時間を過ごした。
普段、父さんは仕事で遅いことが多いから、大抵、母さんと二人で食べる夕食も人数が多いとそれだけで雰囲気が違う。
その上、久しぶりに帰国した娘達家族のために、張り切って用意した母さんの料理はいつもよりもずっと豪華だった。