僕のonly princess
話題の中心になるのは理子ちゃんで。
孫が可愛くて仕方がないらしい父さんと母さんは始終、デレデレしていた。
そんな両親の様子を見て、佐知もとても嬉しそうで。
佐知の隣で微笑む山岡さんも幸せそうだし。
そんな家族を俺もとても穏やかに見ていられる。
俺のせいでこの幸せな家族をギクシャクさせなくて本当によかったと思う。
「佐知子、アレを持ってきてくれ」
夕食後、山岡さんが買ってきてくれたソトワールのケーキを食べ終えて片付けを始めた佐知に山岡さんが声を掛けた。
そう言われた佐知はリビングの隅に置いてあった小さな紙袋を持ってきて、山岡さんに手渡した。
「薫くん」
佐知から紙袋を受け取った山岡さんは俺のところへ来て、小さく声を掛けるとその紙袋を俺に差し出す。
「え?」
びっくりして差し出された紙袋と山岡さんを交互に見る俺に、佐知がクスッと小さく笑って教えてくれた。
「それ理さんから薫へのお土産よ」
「え……」
佐知の言葉にまた驚いて、俺は目の前に立つ山岡さんのキリッとした端正な顔を凝視した。
山岡さんはそんな俺に少し表情を崩すと、俺の手の上にその紙袋を乗せた。
「気に入ってくれれば嬉しい」
穏やかな声でそう言われて、俺は遠慮気味に紙袋の中から綺麗に包装された細長い箱を取り出した。