深海魚Lover
「そっか、そうですね
 
 ケイジさんってば、ロマンチック」


砂時計みたいに海の底を逆さにすれば、深海は天空になる。


私の頭を撫でた後、貴方は瞳を閉じる。


「キョンさんって

 呼ばれてますよね?」

「今、聞くぅ?」


瞳を開けてそう言った貴方は、ほんの少し不機嫌だ。


「ヤクザかケイジか、どっちかにしろ! 
 つうオヤジさんのひと言で

 その日から俺はキョウって呼ばれる
 ようになった」

「キョウ

 でも、どうして……?」

「あの出雲のバカが何を思ったか
 キョンキョンって言い出して

 そこから仲間内じゃ、キョンに
 なった」

「キョン、さん?」


私がそう呼びかけると貴方は少し照れながらも、とっても嬉しそうに微笑むの。


そして、何かを言いたげなその唇で私に触れる。


私達はこの時初めて、唇を重ねた……


「髪、ほどけば?」

「駄目ですよ
 
 絵描くのに邪魔なんで」

「絵、後にすれば?」
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