深海魚Lover
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「私は……

 私はあなたを……」

「まあ、百歩譲っておまえが
 そう思っていないとしても
 おまえ以外の連中は
 俺のことが目障りなはず

 そんな奴らの片棒を担いでる
 おまえも同等だろう、違うか?」

「……」

「これ以上、俺に近づくな

 おまえの顔など二度とみたくない
 
 行くぞ、ツル」

仲間とその場を去る出雲の姿を見ることも両目から零れ落ちる涙を拭うこともせず、ただその場に立ち尽くし何かに囚われている、安寿。

「どうしよう、私……」

放心状態の安寿の耳にこだまする、峰の声……

『ヨウコ、この件が終わっても
 おまえのことは悪いようにはしない

 妻の具合なんだか、やはりもう……
 
 どうだ、ヨウコ、ロウさえ許して
 くれるようならこの私ともう一度』

安寿の手に触れる、峰の手。

『……おまえも同等だろう、違うか?』

「もう嫌……

 (私は、あなたを)死なせたくない」

そんな娘の姿を見つめる、楼。
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