甘く熱いキスで
「どうしてっ!こんなに我慢しているのに、どうしてライナーは帰ってきてくれないの?私のせいで、精鋭部隊から追い出されるような罰を受けて、お城に戻れなくなって……だから、私っ、私が我慢すれば、ライナーと会わなければ……っ、ライナーはお城に戻れるはずじゃなかったの?」

それとも、やっぱりユリアの考えは甘くて、わがままな王女には何もできないのだろうか。

ライナーに会わないだけでは足りないのなら、他の解決策を探さなければいけないと、頭ではわかっていても、感情的になってしまう自分を止められない。

「ユリア。落ち着――」
「そんなのわかっているもん!」

伸ばされた手を振り払うように首を振ると、バチッと大きな音がして炎が弾けた。花柄のカーテンが燃えて焦げた匂いが部屋に広がっていく。

「ユ、リア……?」

アルフォンスの掠れた声が遠くで聞こえる。

苦しい。熱い。

ぐらぐらと……部屋が、いや、ユリア自身が揺れて気持ちが悪い。

「ぁ……」
「おい!」

荒い呼吸を繰り返しながら、ユリアは床に手をついた。身体の奥から燃えるように広がっていく熱、すぐに汗が滲み、呼吸をする度にひゅっと喉が鳴った。

「ユリア?ユリア、これ……気が…………っ、ま、さか……くそっ!なんでこのタイミングなんだよ!」

そう言いながら、アルフォンスは状況を理解したらしい。ユリアは遠くなっていく意識の中でアルフォンスがクラドールやヴォルフたちに連絡をしているのを聞いていた。

意識を保つのも難しいくらい苦しくて、でも、生きてきた中で一番嬉しくて、さっきまで悔しくて流れていた涙が意味を変える。

「ラ、イナー……」

会いたい。

そう思った瞬間、ユリアの意識はプツリと途絶えた。
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