甘く熱いキスで
「ならば……アルフォンス、お前は今の状況で何を求める?ユリアに宿った命の炎を消せとでも言うのか?」
「そういうことじゃないだろっ!」

表面上冷静なヴォルフの返答にアルフォンスが唇を噛む。

新しい炎を吹き消すことはシュトルツでは大罪に当たる。王家の者がそんなことをすれば、フラメ王国がどういう状態になるかは、それこそ火を見るより明らかだろう。

アルフォンスもそれは理解していて、それでも思い焦がれていたユリアがライナーと結ばれた確固たる事実を突きつけられて、困惑しているのだ。

甘やかしていたのは事実――ユリアが後先考えずにライナーを追いかけていたのを知っていて、曖昧な忠告だけで放っておいた。身分や周りの評価に左右されて、ユリアの選択肢を狭めたくなかった。しかし、それは同時に父親として無知な子供に道を教えてやる責任を果たさなかったことにもなるのかもしれない。

「アルフォンスの言いたいことはわかるけど、親っていうのも完璧じゃないんだよ。王女だからっていうだけで、ユリアを縛りたくなかった気持ちはわかってあげてよ」

エルマーはアルフォンスに向かってそう言うと、ヴォルフの肩を軽く叩いて部屋から出て行った。

フローラは泣きそうな表情でユリアのベッドへ近づき、彼女の手を握る。アルフォンスは壁際に座り込み、額に手を当てて下を向いてしまった。

ヴォルフはどちらにも歩み寄ることができずに拳を握った。

こうなった責任は、ヴォルフにもある。イェニーやエルマーが――そして、誰よりも母親であるフローラがあれだけ心配していたのを、自分が黙らせていた。その結果が、これだ。
< 118 / 175 >

この作品をシェア

pagetop