甘く熱いキスで
ザッ、と……ライナーの眼下で波がしぶきをあげる。フラメ王国最北端の港からも離れた海岸には、人の姿はなく、ずっと孤独だったライナーにはぴったりの場所だ。

何があっても隣にいると言ってくれた唯一の人を傷つけて自ら選んだ孤独は、望まない孤独よりもライナーに重くのしかかる。

冷たい――ユリアがライナーへ向けてきた情熱は熱かったのに。

生きる意味を失ったはずなのに、ユリアとまだ形もないだろう子供の炎がちらついてライナーの足を止めている。

「はっ……」

乾いた笑いは、ライナー自身に向けたもの。

ユリアはライナーの犠牲の上に生きてきた憎むべき存在で、そんな人間の未来など憂う価値もない――そう言い聞かせて生きてきたライナーが一番愚かな人間だったのだ。

自分を必要としてくれるユリアは、ライナーにとっても必要な存在になっていた。そして、彼女のお腹に宿った子もきっと……自分を必要としてくれるのだろう。

それも……ライナーが生きていればの話だけれど。

今更、こんな感傷的な気分に流されるように認めるようなことではないのに、本当に、自分は救えない人生を過ごした。

ライナーはフッと息を吐き出して、一歩を踏み出した。

この想いは告げることなく海に沈むのだ。

何も知らずに笑うユリアが憎かった。ライナーを認め、必死に寄り添おうとしたユリアに惹かれた。

すべてを知っても尚、ライナーを信じ続けてくれた運命の人。ずっと憎み続けていたはずの王女。

――貴女を、愛しています。

「ユリア」

“王女”としてしか呼んだことのなかった名前は、ライナーの唇に馴染んでいて、また漏れた笑い声は波の音にかき消された。

ライナーは、ユリアに近づきすぎた――…

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