甘く熱いキスで
「ユリアは君を見捨てなかった。こんなになるまで君を追いかけて、泣いて……君はどうする?」

このまま何もしなければ、ユリアはアルフォンスと結婚させられるだろう。ユリアが幸せならばそれでもいいのかもしれない。でも、ユリアがライナーを求める限り……それは表面上の、周りの価値観を押し付けることになる。

無理矢理にでもライナーとユリアの結婚を認めさせる方法――エルマーが最後のチャンスを与えてくれるのならば、ライナーの選択は1つしかない。

ライナーはゆっくりと起き上がり、ベッドを降りた。まだクラドールのトラッタメントを受けているユリアの手を握ってみると、いつもライナーに触れていた温度とはほど遠く冷たい。

ギュッと……自分の体温を分けるように彼女の手を握り、それからエルマーに向き直る。

「ベンノ・カペルとマルクス・ビーガーの取り引きで動いた金額にその出処。それからユッテ・アイブリンガーの“世話係”について……猶予なんてないよ。カペル家にはヴォルフが直々に出向いてるし、ま、頑張って名誉挽回してきてよ。俺はカイの応援に行かないといけないから」
「……はい」

エルマーに肩を叩かれ、ライナーは軽く頭を下げた。
そしてクラドールに向き直り、また頭を下げる。

「ユリア様を……よろしくお願いします」

目を閉じたままのユリアを一瞥し、ライナーはしっかりとした足取りで治療室を後にする。

もう迷う必要などない。

ライナーには生きる意味ができた――ユリアという、愛しい運命の人。

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