甘く熱いキスで
「そうだね。炎の意志を受け継ぐフラメ国民として、最も許されないことをしようとした。君は誇りを傷つけたんだ」

シュトルツの教えは、炎属性の誇りを大切にすることが根本にある。炎属性の人間は皆、平等であり、その中で最も祝福されるのは新しい炎(いのち)である。それを吹き消すことはご法度だ。もちろん、生まれた命、今燃えている命の炎を消すことも。

「そして、ビーガー家、アイブリンガー家の名誉も……カペル家に至っては当主に重症まで負わせている。君の罪は、軽くないよ?」
「承知しております」

許されようと思っていなかった。自分は死ぬつもりでいたから、後はどうでもいいと……考える必要などなく、めちゃくちゃになればいいとさえ思っていた。

けれど、これからユリアに必要とされて生きるには、ライナーの行動は枷になる。大罪人の子供だったライナーは、自らも罪人となったのだから。

「幸い、ベンノの意識はまだ戻ってない。ビーガー家にはイェニー、アイブリンガー家にはカイを行かせた。その意味はわかるよね?」
「っ、それ、は――」

ライナーは言葉に詰まって、エルマーを見つめた。エルマーはいつになく真剣な表情でライナーを見つめ返している。

「ライナー、君にとって今一番大事なことは何?そしてそれを勝ち取るために必要なことは?」

そう言われて、ライナーはユリアが眠るベッドへと視線を向ける。

一番大切なのは、ユリアと彼女が宿してくれたライナーの子供に決まっている。この世界で唯一、無条件でライナーを必要としてくれる存在。彼らのそばで生きて、新しく踏み出すためには……ライナーの行いを“書き換える”必要がある。
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