甘く熱いキスで
「……何度も“ユリア”って、聴こえたの。夢の中でも……ライナーが私を呼んでくれた」

ユリアはそう言うと、隣のライナーを潤んだ瞳で見上げた。

「私……ライナーのこと、好きよ。自分が未熟だってわかっているわ。私のせいで、ライナーにつらい思いをさせたことも知っている。でも、私……ライナーと一緒にいたいの。私にとって、貴方とのキスは初めてのときからずっと……ずっと、特別だもの」
「ユリア様……」

ライナーはユリアの頬に零れた涙を親指で拭った。すると、ユリアはライナーに身体を寄せて、そっと背中に手を回す。

「ユリアって……呼んで?お願い。ライナーが、ここに来てくれたのは、私のこと……っ」
「……愛しています。ユリア」

謝らなければいけないことはたくさんある。けれど、今伝えなければいけないことは、ユリアが好きだということだけ。過去への言い訳や未来への決意は、行いで示すべきだ。いくら綺麗な言葉を並べてもライナーを信用する人間はいないだろう。たった1人……ユリアを除いては。

「私と、一緒に生きて欲しい。貴女が……貴女とこの子が、私の生きる意味ですから」
「うん……うんっ」

ユリアは何度も頷いて、顔を上げて泣きながら笑った。そんなユリアの涙を唇で掬うように顔中にキスを落として、唇を重ねる。

いつからか、ライナーにとっても特別になったユリアとのキスは、ずっと苦しかった。でもそれは、ライナーが自ら決めた”生”に迷っていて、ありもしない葛藤と戦っていたからだ。もう、そんなことをする必要ははない。

今までで一番熱いキス――何の迷いもなく、ユリアに触れた初めての瞬間だった。
< 163 / 175 >

この作品をシェア

pagetop