甘く熱いキスで
瞬間。

パチッと2人の間で炎が弾けて、ユリアの身体はグンと強い炎の気に引き寄せられた。対象物と気の波長を合わせて磁石のようにそれを引き寄せたり弾き飛ばしたりする呪文――使ったのはライナーだ。

2つの効果を同時に使う技術はさすが精鋭部隊に配属されるだけの才能といったところだろう。

ユリアはライナーの腕に受け止められて、ユリアとは逆に弾き飛ばされたアルフォンスを見る。アルフォンスの方は尻もちをつき、口を半分開いたままユリアとライナーを見上げてくる。

「御兄弟の喧嘩はその辺で終わりにしていただけますか?皆さん、お困りですよ」

一連の出来事を見ていた給仕係の侍女たちは、呆気にとられてライナーを見ていた。それもそのはず、王女であるユリアと、直系ではないにしろ国王の甥に対して呪文を使ったのだ。

「兄弟じゃない!俺は――っ」
「アルは、弟よ!」

ユリアが叫ぶと、アルフォンスはグッと唇を噛みしめて瞳を揺らした。ユリアは苦しそうに眉を顰めるアルフォンスから目を逸らして、腰に回されたライナーの手をゆっくり解いた。

「ライナー、行きましょう。ここじゃ、落ち着いて話ができないみたいだわ」
「っ、ユリア!」

アルフォンスの呼びかけを無視してユリアがライナーの手を引いて客室を出て行くと、アルフォンスは前髪をくしゃりと握って床を叩いた。
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