僕は君の名前を呼ぶ
「お母さんとお姉ちゃん、それからお父さんを小さい頃のわたしが追いかけるの。でも、追いかけても追いかけても三人との距離が離れていって…。それを今のわたしが傍観してる夢」
見た夢を思い出しながら、ゆっくり、ゆっくり話す。
そんな橘を見て、言葉が見つからなかった。
──『つらかったな』
そんな言葉、橘は求めていないだろう。
──『もっと俺を頼って』
ありきたりすぎる。
頭をフル回転させて言葉を探してもふさわしい言葉がわからなかった。
言葉を出せないかわりに、俺の手は自然と橘の方へ伸びて、頭を撫でていた。