僕は君の名前を呼ぶ


この手、離したくねーな。
“今日だけだから”って言って繋いでたけど、やっぱずっと繋いでいたい。

そんな権限、俺にはないけどな。


「今日はほんとにありがとね。楽しかった!」


「俺こそ、ありがとう。一緒に来てくれて」


少し声のボリュームを落として橘は言う。


「…言うタイミング見失っちゃって言えなかったんだけどさ、浴衣、似合ってるよ」


思わず歩みを止めてしまった。
そして顔はカアアと赤くなる。


「青木…?」


「…嬉しい。すげぇ嬉しい、橘にそう言ってもらえて。よかったー、浴衣着てきて!」


隆太のアドバイスを素直にきいて正解だったな。


「よかったら、またどこかに行かない?受験が落ち着いたらになっちゃうと思うけど…」


「うんっ」


橘はまたニコッと笑って答えてくれた。


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