僕は君の名前を呼ぶ
──スキ。
──シアワセ。
──アイシテル。
今まで散々囁いてきた言葉たちの重さに今更気づく。
軽々しく、とか、適当に、とか、そうなふうに思ってきたわけじゃない。
ふたりの未来がなくなった今、言葉だけがあてもなく彷徨って、重みにやられてそこらへんに転がっている。
──あのときは俺たちのはっきりしていないながらも未来は確かにあった。
目の前の壁に怯えながらも、未来の存在を確かめるように言葉を紡いできた。
今思えば、それは。
怖がりで、さみしがりな彩花を俺のもとにつなぎ止めておく手段のひとつだったのかもしれない。
身勝手で、わがままな俺の出すぎた行動だったのかもしれない。
そのせいで、彩花を関係で縛って苦しめた。
彩花。俺は君のために、何ができただろう。
そんなの、言うまでもないだろう。
“次”を望めないのはわかっている。
でももし、もう一度俺たちの道が交わることがあったら、そのときは、たくさんたくさん笑おう。
俺が、今までの分も笑わせてみせるから。
だから君は、俺がそうしてあげられない分も笑っていて。
俺は、君の幸せだけをあの星に願うよ。
サヨナラ、最愛の君よ──。