僕は君の名前を呼ぶ
全身ビショ濡れになって帰宅した俺を見て、というより、俺の背中にいる橘を見て母さんは一瞬びっくりした顔をした。
でもすぐいつもの顔になって、「あら、いらっしゃい」と、穏やかな口調で言った。
俺は橘をおぶったまま洗面所に直行した。
「ちょっとぬるいかもしれないけど、風呂入っててくれるか?着替えは後で持ってくる」
橘はまた静かに一度だけ頷いた。
拒否されたら、どうしようかと思った。
よかった…………。