後悔なんて、ひと欠片もない
もともと客層のいいとは言えない店。
午後9時。
煙草を口に咥えて、カーレースゲームのシートに座るグレーのスーツを着た男を見つけた。
私は、声を掛けることにした。
マニュアルに沿ってやんわりと丁寧に。
「ごめんなさい。そこ禁煙なんです。吸うなら、喫煙コーナーでお願いします」
すると。
普通の人に見えた七三分けの若い男は眉を釣り上げ、豹変した。
「え?なんだ?吸ってねえじゃねえか?なんだ、お前?」
私を睨みつける顔は真っ赤で、吐く息が酒臭かった。
確かにそうだ。吸ってはない。
私は余計な事を言ってしまった。
かっと頭が熱くなった。
「ごめんなさい…」
頭を下げて謝った。それなのに。
「なんすかあ?先輩、どうしたんすか?」
男の仲間が2人現れた。
センスの悪い柄物の開襟シャツ。ど紫のTシャツ。
それにお揃いのようなダボダボズボン。
タイプは正反対なのに、七三分けの後輩らしかった。