ねぇ、先生。

部活をしてる生徒に見つからないように美術室までたどり着くと、頬が緩んだ。

夏休みが始まってこうしてここに来るのは今日が初めてじゃない。

毎週火曜日と木曜日に行きたいけど、バイトがあって行けない日もある。だけどなるべく来るようにしてた。


―ガラッ…


いつもみたいにドアを開けると、その数十秒後、奥のドアが開く。

「今日はもう来ないかと思った」

ふにゃんと笑ってそう言うと、おいでと手招きをする。そんな先生を見るのが好きだった。


「今日は絵描いてないの?」

「うん、体育祭のポスターのデザイン決めてんの。」

「これ、先生が?」

複数あるデザインを指差すと、先生は首を横に振って「美術部の子達が描いたの」そう言って嬉しそうに見つめる。


「俺は全部好きなんだけどね、一つに絞れって言われてんの。」

「先生が選ぶの?」

「任されたけど、もし今日茉央ちゃんが来たら一緒に選ぼうと思ってた」
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