ねぇ、先生。

「触んなって…それ教師が言うことじゃないね。怒られちゃうよ」

あたしが笑うと、先生も笑った。

「まぁでも、それなら抱き上げたのも教師らしくなかったかも。咄嗟にそうしたんだけど、歓声上がってビックリしたよ」

歓声が上がった?

……あぁ、そういえば保健医も言ってたっけ。先生があたしを運んでるとこを見て、意外と力持ちでビックリしたって。

きっと歓声はほとんど女の子からのものなんじゃないかな。


「あ、変な意味じゃないよ。ただ早く運んだ方がいいと思って……茉央ちゃんじゃなきゃそうしてないかもしれないけど」

ダメだ、やっぱ教師らしくない。なんて言って困ったように笑う先生。

「加地くんにバレてたなら、肯定しちゃったようなもんだね」

だから茉央ちゃん1人のせいじゃないよ。あたしにはそう言ってるように聞こえた。

直接言わないけどこうしてあたしを安心させてくれる。こういうところはやっぱりあたしと違って大人なんだ。


今なら言えるかな。

「先生、あたしね…」

先生が女の子の手当てしてるの見て、すごく嫌だった。嫉妬した。

そう言おうとしたときだった。


―ガラッ…

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