ねぇ、先生。

例えばほら、絵を描いてるときの真剣な表情とか。コーヒーが飲めないこととか。あたししか知らないことは考えればたくさんあった。

ちゃんと特別だったはずなのに、勝手に不安になってよそ見をしてしまったあたしへの罰だ。

先生はちゃんとあたしを想ってくれてたのに、心の奥の方でそれを疑って、ただ純粋に先生が好きだった頃には戻れなくなった。

欲張った。

先生にはあたしだけを見ててほしいって。あたし以外の女の子を見ないでって。そんなこと出来るわけないのに。

そのうえ、それさえも先生に伝えられなかった。きっと無理だって思って伝えることさえしなかった。

言わないで伝わるわけないのに、言わなくても分かってほしいなんて自分勝手だ。


ごめんね先生。

ちゃんと言うから。

もう欲張ったりしないから。

だから、別れるなんて言わないで。


…来るな、なんて言わないで。

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