【完】切ないよ、仇野君
「ちー、ホントごめん」


よほど一昨日のことを気にしているのか、泰ちゃんは大きな体をしゅんと丸め、私にぽつりと謝る。


これじゃまるで、私が泰ちゃんを傷つけたみたい。


「……ホントに悪いて思っとる?」


攻守交代を、バスケではターンオーバーっていうらしい。


だから、たまには私がオフェンスの番でも良いよね?


不安そうに見上げる泰ちゃんに、飛び出そうな程に動き出す心臓を抑えて顔を近づける。


そして……振り絞った勇気で、泰ちゃんの眉間の辺りに、唇を押し付けた。


「……ビックリしたど?これで、一昨日んこつは、チャラな」


声は震えるし、多分ちゃんとは笑えてないと思うけど、椿、私、ちゃんと出来たよ。


『キスにはキスで返り討ちにしてやれよ』


椿に仕込まれた入れ知恵を頭の中で再生させながら、自分でも驚くような大胆行動に、どんどん顔が熱くなる。


それは、泰ちゃんも同じで、まるで、今にも火が出そうな程に顔が赤い。
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