【完】切ないよ、仇野君
その顔は、眉毛がハの字に下がった困り顔。


いつもなら、ここで私も黙ってしまって気まずくなってしまうけど、でも。


昨日、椿と色んな話をしていて仕込まれた『ある仕返し』を試してみようと思うんだ。


「……おはよ。ボール磨きは一年とマネジの仕事ばい?何で副キャプテンの泰ちゃんがしよっと?」


本当は知ってるんだ。昨日、事情をオーラで何となく察してくれていた雫ちゃんが元で、一軍の中で一昨日の出来事が知れ渡り、行雲キャプテンに罰でボール磨きを命じられていたのを。


夜になって、雫ちゃんから初めて電話がかかって来た時はビックリしたけど、その時に決めたんだ。椿に仕込まれたそれを実行しようって。


誤算だったのは、やるなら昼休みか放課後だと思っていたのに、朝からやってるってこと。


出来るだけいつも通りに接した私だけど、ちょっと気まずいの、顔に出てないか心配。


……いや、きっと大丈夫。だって、泰ちゃん驚いてる顔してるもん。
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