【完】切ないよ、仇野君
「…………ばってんが、俺も諦め切れん」


「歩君?」


優しく笑っていた歩君の顔は、次見た時には真剣な顔。


同い年とは思えないこの大人びた雰囲気は、一体どこから出ているのか不思議だ。


「信じてもらえんのは分かっとる前提やけど、俺、ちーに一目惚れ。びびっと来たんよ」


そして、その歩君から紡がれる言葉は、まるで少女漫画のヒロインが、相手の男の子に言われるような台詞。


「泰河んこつ好きなんも分かった。やけんさぁ、嫌やないなら、友達から、始めてみん?」


こんなキラキラした人に、こんな風に言われて拒否出来る人なんてこの世にいるのだろうか。


「じ、じゃあ……友達から」


振り絞った僅かな私の声に、歩君の大人びていた真剣な顔が、再びくしゃりとあどけない笑顔で崩れた。
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