【完】女優橘遥の憂鬱
 「イヤ、聞いてほしい。俺はあの時……」

彼は私との一部始終を語り始めた。


「皆が見ている前でこの人を犯したんか?」


「ああそうだよ。俺の直下立つ股間も、バックから遣るとこも見られながらだ。それでも俺は、欲望を満たしたくて遣ってしまっていたんだ」


「最低だな、お前」


「そうだよ、最低だよ。他の皆は仕事だった。AVで女性と遣ることだって立派な仕事なんだよ。でも俺はそれを撮影する側の人間だ。男性俳優を押し退け、自分から彼女に手を出したカメラマン失格の最低な人間なんだよ。だから俺はヌードモデルの彼女を抱けなくなったんだ。彼女の苦痛に満ちた顔を思い出したら……」

彼は泣いていた。
私のために泣いてくれていた。


「あれから俺、誰とも遣ってない。イヤ出来ないんだ」


「そりゃそうだ。そんなバカなことするからだ」


「解ってる。俺がバカだと解ってる。でも彼女が欲しくて堪らなくなるんだ」


「今さっき出来ないんだと言ったばかりだぞ」


「他の誰とも遣れないってことだよ。きっと彼女だったら、出来ると思うんだ。お願いだ、彼女と結婚させてくれ!!」

彼はやっと両親に今日来た本当の訳を切り出したのだ。


「それだけの理由か? お前はただ、あの時と同じように欲求を叶えたいだけだ」


「違う……、絶対違う」


「アンタが責任を取るってこと?」


「違う。違うよ。俺は彼女を愛している。心の底から愛している!!」

彼は私を愛していると言ってくれた。
心の底から愛していると言ってくれた。

私はその言葉に震えていた。


「俺はあの時……、衝動的に捩じ込ませた後で、貴女の苦痛に満ちた顔を思い出したんだ。気が付くと貴女の身体に手を置いて、激しく腰を振っている自分に気付いた。カメラマンとしてしてはいけないことだと感じながらも堪能してしまっていたんだ」

私は思わず俯いた。
だって……
此処玄関で、しかもご両親の前だよ。


でもそのことに慌てた両親はやっと家の中に入れてくれた。
これで安心なんて出来なかったけど……



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