Spicy&Sweet

大きな噴水の前、少し離れた場所で何度も瞬きを繰り返す待ち合わせの相手。

どうやら別人だとでも思っているらしい。

それくらい極端な反応をしてくれると、こっちもお洒落してきた甲斐があるってものだ。

私は笑いを堪えながら、愛しの彼の元へ近づく。


「徳永さん」

「……ああ、やっぱりあやめ先生でしたか。すいません、ジロジロ見たりして」

「いえ。結構外で生徒さんとその保護者さんに会っても気づかれないこと多いので、慣れてますよ」


今日は特別に気合いが入っているとはいえ、それは本当のこと。やっぱりいつもの水着スタイルじゃないと、皆ピンと来ないものらしいから。


「……それにしても」


自然に二人で並んで歩き出した瞬間、徳永さんがこちらを見て呟く。


「綺麗な方だとはわかってましたけど、予想以上すぎて……やばいな、これは」


最後のは独り言みたいに、視線をずらして言った徳永さん。

そんなこと言われたら、こっちだってやばいです。

その長い前髪をかき上げる姿とか……セクシーすぎて。

同じ職場にいる男性インストラクターが髪を伸ばしてた場合、不潔な印象を持ってしまって嫌なんだけどな。

やっぱり……好きな相手だからなのかな。

徳永さんの横顔を盗み見ていると胸は飽きることなく何度もときめいて、つけてきた香水が何倍にも甘くなっている気がした。


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