無愛想な彼が私を見ない理由


『…………岡野さん、いつまでぼーっとしてんの。

帰るよ?』


佐倉くんは何事もなかったように、

さらーっとドアの方にいた。


期待しちゃったよ…。


『岡野さんってば。

そんなに俺の言うこと聞けない?』


「ち、違うって!

佐倉くんが紛らわしいことするから……」


言葉をもごもご言うと、佐倉くんは、


『え、俺なんかしたっけ?

ごめん、分からない』


と口角を少しだけ上げた。


その表情にまた、ドキッとしてる。

あー、重傷じゃないか私。


「…………意地悪だよね」


『…………岡野さん限定』





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