この香りで惑わせて



「だめだ! もう……我慢できない」


「ああっ! んっ……あんっ」


 明らかに、昼間の会社――それも会議室から聞こえてきていいような声じゃない。


 机の足が床を擦る音まで聞こえてきて、嫌でもどんな姿勢でしているのかを想像させる。


 あたしは、顔を真っ赤にしながら足音を立てないように会議室から離れた。


「ねえ……そろそろ……行かなくちゃ」


「ああ」


 離れても、静かな部屋に服を整える音が大きく聞こえる。


「また……今夜」


「ええ」


 その会話が聞こえた直後、会議室の扉が開いて、あたしは出てきた人を見て驚いた。


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