この香りで惑わせて




「口止め料です」


「香水?」


 ピンク色の瓶には半分くらい液体が入っていて、爽やかな匂いがする。


「はい。それを使えば、紳士な男も野獣に変わりますよ」


「ただの香水でしょ?」


「男の本能を刺激するような調合がされてるんですよ。 騙されたと思って使ってみて下さい。つけるのは、首筋とか胸の谷間、腿の内側よ」


 また堅苦しいイメージに戻った彼女は、先に行きますと言って出ていった。


 更衣室には、戸惑うあたしと香水の小瓶。


 香水にそんな力はない。


 あたしは馬鹿馬鹿しいと思いながら、鞄に押し込んだ。


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