◇東雲庵◇2014〜2017◇
昭和元禄落語心中
こんばんは!年の瀬ですね。
旅行だーイベントだーヘルニアだークリスマスだー年賀状だーとバタバタしていたらあっという間に12月30日ですがな。(今年は12月にセレブ会が無かっただけマシなんだが)(←セレブ会については『東雲庵2011~2013』のP.29を参照のこと)←ひつよう?

伊達巻きが大好きです。
あのしっとりじゅわっと甘い不思議な魅惑の練り物…さっき、メーカー違いで3本も買い込んできちゃったもんね、いえーい。
…って、違う!そんな話をするためにPCを開いたんじゃないんだ!ミラさんと約束したんだもん!『昭和元禄落語心中』について書くって!

そんなわけで皆様、今年も一年お世話になりました。良いお年を…の、ごあいさつの前に。(笑)

わたしの2016年、この2つの作品に触れずば終われないので、お時間が許す方はお付き合いくださいませ。
今年はTVアニメ『昭和元禄落語心中』に始まり、アニメ映画『この世界の片隅に』に終わった一年でした。

はじめに一つ断っておくと、わたし、基本的にアニメーションは苦手です。うん。そうなの。意外ですか?昔からそんなに得意じゃないんです、アニメ。マンガ、じゃないよ。アニメ、がね。
時々、「マンガ好き」=「アニメ好き」だと捉えられる方がありますが、そこは言っておきたい。漫画とアニメは違う。まぁ、どっちにも大して興味がない方にはどうでもいい話なんですが、少なくとも私にとっては、大きく違う。
紙に描かれた絵とストーリー(漫画)に、音と色と動きが加わって(→アニメ)「はい、このシーンはこういう風だよ」って完全パッケージで目の前に突きつけられると、想像力の限界を制作側に作られてしまうでしょ。私、それが苦手みたいなんです、どうも。(自分が何故アニメが苦手なのか長年の疑問だったんだが最近ようやくこの答えにたどり着いた。紙媒体と比べて情報量が多いようで実は制限されているのがダメなんだな多分)あと製作費が安いんであろうアニメ作品なんかは画面の質感がペタッとしてて、それだけでもうダメ。色の数が少ないの、ダメ。影とか光で奥行きを表現せよ。あとあと、CG多用で人の手作業の気配が感じられないものも、苦手。(だからどれだけ手間暇がかかっていてもピクサーフィルム系は得意ではない。ヌルヌル動くの、ダメ。)
自分が(上手じゃないけど)絵を描く側の人間だから、っていうのが大前提にあるんでしょう。絵柄がダメだと話がどんなに面白くても漫画も読めないし。

宮崎アニメが好きなのは、多分、上記の苦手事項に当てはまらないから。手塗りだし、圧倒的な手間暇による情報量の多さが画面に表れてるからだと思う。

まぁそんなわけで、そんなにNG項目多くてアニメ苦手なら語るなよって話なんですが。

◆昭和元禄落語心中◆

その苦手意識を超えて、なんなら原作本よりもアニメーションの方が良い!って珍しく豪語したい作品がこれ、『昭和元禄落語心中』です。今年前半に第1期「与太郎放浪編」を終えて、年明け1月6日から第2期「助六、再び編」が始まる模様。

公式サイトに、第1期を25分ほどにまとめたダイジェスト動画が公開されているので、興味を持たれた方は是非ご覧になってみてください。

そもそもこの作品、椎名林檎×林原めぐみの主題歌が切っ掛けで見始めたんですよ。(林檎ちゃんファンなので)ええ、原作をまったく知らない状態で。落語も嫌いじゃないし、一回見てみるかーという軽い気持ちで。珍しく、アニメ先行型です。

見始めたら、これがまぁ…予想外に凝った作りで、アニメなのに全然浮ついた感がなくて、重厚、丁寧、かつ人情味溢れる素晴らしい作品だったんです。初回放送は1時間あったんですが、ずっしりと見応えがありました。

魅力の基軸は、映像の美しさとストーリー、それからキャラクター、及び彼らに声を当てる声優さんの語る落語の巧さ。この四つかなと思います。

【映像美】
まず、画面全体が美しい。(キャラクターデザイン、衣装、寄席の建物、雰囲気、装飾、街や小物の書き込み、それらすべての色使い)お金かかってそうです。あとで原作の漫画本を読んで気づいたけど、原作よりもアニメの方が線にキレと色気があって綺麗。良い意味で裏切ってる。(進撃の巨人もこのパターンだな…)割と、原作は絵が淡泊で線が丸く際が甘いので、アニメーションではその線と線の隙間を補って、ポヤンとした部分もシュッとさせて、デッサン等の修正をかけた結果、全体としてものすごく化けた感じ。なんだろ、地味顔なんだけど基本整ってるからめっちゃ化粧映えする、みたいな。そうそう、落語心中のアニメ化は画的に評すると整形と化粧が大成功した例みたいな感じです。…もういいか。すみません、長い。まず落語心中は画面全体が美しいというのが大きな魅力だったので喋り過ぎました。色遣いもね、和の色合わせで良いんです。明度、彩度をちゃんと考えて配色されてる気がする。

【ストーリー】

大きく分けると、平成の現代編と、昭和の過去編に分かれて話が進んでいきます。以下、ネタバレ注意。
主に過去編について書きますが、有楽亭八雲(先代)に弟子入りした2人の若手落語家・菊比古と助六が互いに芸を極めん、戦争で傷を負った落語界を盛り上げよう、と切磋琢磨していきます。この2人が生まれも育ちも芸風も対照的であり、互いにコンプレックスを抱き合いつつも唯一無二の友情で結ばれている辺りが堪りません。「八雲」という大名跡の後継を争うライバル同士でありながら、互いの寂しさや弱さを補い合う夫婦的な愛情がそこに介在する訳です。作品としてはBLではないけれども、BL出身の雲田はるこさんならではの濃厚な関係だなと思います。芸を磨く面においても、お互いが自分の成長のためにお互いを必要としている。この2人の間に、みよ吉というどうしようもない女性が入り込み、誘惑し、引っ掻き回し、やがて助六を道連れに破滅へと向かって行きます。みよ吉のだらしなさ、どうしようもなさが、これまた「女!」って感じで際立ってて良い。

ひとりこの世に残された菊比古は不承不承八雲の名前を継ぎ、孤独に芸を極め、当代一の落語家と評されるまでになる。この、残された八雲(菊比古)が老齢になってからが現代編。助六とみよ吉を同時に失って生ける屍のような八雲の心の穴を誰がどう埋めていくのか、果たして魂は救われるのか、というのが見どころ。(あくまで個人の感想ですが)
個人的に芸事を極めるタイプのお話は身につまされるのもあって大好きです。これで良い、というゴールがない。正解もない。世間の評価が全て。模索の苦しさ、上手くいった時の喜び、自分にないものを持っている友人への妬み…わかりすぎて、肌にビシビシ来ます。

【声優さんの落語】
そう、そしてこれ。
ベテラン声優さんの語る落語が、びっくりするくらい上手いんです。重要人物の助六を演じるのは、山寺宏一さん。只でさえレジェンド山寺さんなのに、彼はなんと落研出身でもあるらしい。助六の個性でもある軽妙洒脱な語り口は、流石の一言です。どのくらい語りが素晴らしいかは月乃ミラさんのエッセイ『ミラ子の呟き』を読んでくだされば…←まるなげw 
山寺さんの他、主人公の菊比古を演じる石田彰さんも、皆さん噺家じゃないけど、ベテランならではの渾身の落語を聞かせてくれます。

【キャラクター】
ストーリーでも触れましたが、菊比古(後の八雲)と助六、ダブルヒーローのキャラクターが外見・中身ともに対照的かつ魅力的 。
有楽亭門下、兄弟弟子の2人。菊さんは花柳界出身ゆえ女のように美しく(しかし女でないので養子に出される)、かつ落語に対しても修行を怠らずストイック。努力を重ねる秀才タイプ。『ガラスの仮面』でいったら亜弓さんタイプ。で、北島マヤに当たるのかな、天才タイプが助六。見た目に構わず金にも女にもだらしない。生活能力はゼロどころかマイナス。落語以外はどうしようもない男なのに、語らせたら客の心をつかんで離さない。身元もはっきりしないで、ドヤ街から半ば押しかけのように師匠である先代八雲の下に来る。

落語の技術以外は恵まれている菊比古が、助六の才能に懊悩する様子がなんとも苦しく、しかしその故に、艶めかしいのです。…そう、色々書いて来たけど、私にとっては悩める菊さんの色気がこの作品のすべてなのだ。ばばーーん。←言い切ったな

菊比古は際の際で大切な助六(と、ついでのみよ吉)を救えなかったという自責の念があるので、平成の現代編になっても相変わらず悩ましい。
その、傷や因縁、孤独感を全て包んで昇華してくれる存在が現れるのか、否か(笑)。興味を持たれた方は、コミックスをお読みになるか、年明け1月6日から始まる第2期アニメをご覧くださいませ。個人的にはアニメがオススメです。やはり落語は聴いてナンボだと思いますので。

あ、ミラさんが言及しておられた助六の最後の演目が「芝浜」だったことについての考察を忘れてるわ、わたし。

とりあえず、長くなりそうなので今日はこの辺りで。
芝浜云々はオマケでまた。

明日、更新できるかなー…出来ないかもしれないので(笑)、とりあえずご挨拶をば。

みなさま、今年も一年お世話になりました。
温かく、時に熱い交流を、ありがとうございました。
読んでくださった全ての方へ感謝と友愛の気持ちを送ります。

どうぞ、良いお年をお迎えくださいね。

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