茉莉花の少女
第9章 誕生日
 母親に身柄を拘束されるようにあの家を出た。

 彼女にとって、金になる僕は何があっても抑えときたいものだったのだろう。

 彼女が嫌いだった。

 だから、その分、自分をさげすんだ父にもわずかに期待していた心があったのかもしれない。

 だが、「父」をそれから二ヵ月後に見た。彼の傍には見たことのない女の人がいた。

 そのときはよく分からなかった。

 ただ、父には他に大切な人がいたのだと分かった。

 けれど、今から考えると、それが彼が僕との血縁を否定した理由かもしれないと思った。

 彼女との間に子供を作り、その子に全額を相続させたかったのだろう。
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