茉莉花の少女
 僕たちがおろされたのは一軒のホテルの前だった。

 辺りには軒の低い家が立ち並んでいるが、マンションなどもそこそこあった。

 その辺りの地名は聞いたことがある。

 だいたい僕の住んでいる場所から車で五、六時間はかかるところだ。

 その場所について彼女が車でと言ったのに納得した。

 駅から一時間以上は離れているため、自由に行動できるような場所でもないからだ。

 ホテルがあるのである程度観光客がいるのかもしれないが、辺りを通るのは少し年配の人が心なしか多い気がした。

 まずはホテルにチェックインをする。

 僕の部屋がツインなのは分かるが、彼女の分もシングルの空きがなかったかツインの部屋だった。

 荷物を置いて一息を吐く。

 未だ彼女の兄は僕には一言も口を聞かない。

 僕に対して怒っているのだろうか。

 黙られると、それさえも分からない。
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