茉莉花の少女
第14章 かけがえのないもの
その頃から僕は変わったのかもしれない。

 前みたいに空が晴れていても不快感を味わうことはなかった。

 楽しそうにしている人を見ても、いらだつことはなくなった。

 笑顔で話しかけられても、昔のように冷めた気持ちになることも少なくなっていた。

 それは心が広くなったというよりは周りのことがどうでもよくなり、ただ彼女のことだけを考えていた。

 彼女が笑ってくれることだけを望んでいた。

 母親と何度か顔を合わせることはあった。

 けれど、昔のように胃の中身を全て吐いてしまいたくなるような嫌悪感もなくなっていた。

 やはりそれも母親に関心がなくなったからだった。
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