茉莉花の少女
第25章 君が見たかったもの
 十月二十三日。僕と彼女のきめた最後の日だった。

 その日、僕は彼女の家に行くことになった。

 彼女の誕生日を祝うために。

 でも、彼女にあげる贈り物を決めることはできなかった。

 きっと何かをあげたらそれが重荷になってしまう気がしたのだ。

 彼女の家のチャイムを鳴らすと、君は今までと同じように笑っていた。

 彼女が着ていたのは茶色のワンピース。ただでさえあどけない彼女がもっと幼く見えていた。

 君の目が赤く腫れていたことに気づいたけれど、触れないようにする。

「プレゼントだけど」

 家に入った僕は話を切り出した。
< 297 / 362 >

この作品をシェア

pagetop