茉莉花の少女
「何もいらないよ。今日、久司君が来てくれたことが最高のプレゼントだから」

 彼女は気づいていたのかもしれない。

 僕が何も買えなかったことを。

 茉莉は僕の手を引いて、リビングに連れて行く。

 そこに並んでいたものをみて、ただ驚いていた。

 別にたいしたものではない家庭で普通に食べられているものだった。

 でも、彼女の玉子焼きを知っている僕には驚きだった。

 最後に食べたのは昨年の冬。

 その頃よりも上手になっていた。

「好きなだけ食べてね」

「それなら昼ごはんの量を減らせばよかった」
< 298 / 362 >

この作品をシェア

pagetop