茉莉花の少女
「見て」

 そう自信満々に笹岡茉莉が差し出したのはお弁当だ。

「また、お兄ちゃんが作ったものですか?」

 おいしければそれはそれでいいけど。

「自分で作ったの。不恰好だけど、よかったら食べて」

 彼女は少し顔を赤くしてうなずいていた。

「ありがとう」

 僕が受け取ると、彼女は屈託のない笑顔を浮かべる。

 そんな顔をされたら反応に戸惑う。

 蓋をあけると、昨日とは違ういびつな形をしたおかずが並んでいた。

 なんとなく彼女が苦労をしながら作ったんだろうなと思えた。
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