茉莉花の少女
「だめならお兄ちゃんの作ったものがあるよ。一応、作ってもらったの」

 僕が黙っていたので、絶句しているとでも思ったのだろうか。

「これでいいよ。でも、朝、作ったのか?」

 冷凍食品なんか一つもない。僕の母親が作るごはんとは大違いだった。

 僕の母親は料理が上手だと思う。少なくとも離婚前は作っていた。

 しかし、その回数も徐々に減ってきて、今ではゼロに等しくなっていた。

 最後に作ってもらったのは小学校の遠足のときだ。

 冷凍庫に入っていた冷凍食品が無造作に詰められていたのを覚えていた。

「それだけじゃ間に合わないから夜のうちに準備をしておいたの。

何度もお兄ちゃんに妨害されたけどね」

「妨害って」

「危ないから代わりに切ってやるって。本当に大変だったのよ」
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