茉莉花の少女
 そんな姿を想像できた。

 今までになかったあたたかい気持ちがわずかに胸の奥に広がるのが分かった。

「でもよかった。味見してもおいしいのかまずいのか良く分からなくて困っていたんだよ。好みも分からないから」

 だからこんなに味付けが濃くなったのだろうか。

「兄って怖いんですか?」

 ごはんを食べながら、そんなことを聞いた。

 なんとなく気になったからだ。

「優しいよ。でも、お兄ちゃんは変人でなかなか彼女ができなくて心配なんだよね」

 変人に変人と言われるってことはよほど変なのか、意外とまともなのかどっちだろう。

「お兄ちゃんを茉莉先輩、彼女を彼氏にしても文章が成立しますよね」

 彼女は一瞬顔を明るくした。それは多分茉莉と呼ばれたからだろう。

 しかし、頬を膨らませ、僕を睨む。
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