茉莉花の少女
「おいしい」

「本当に?」

 上ずった彼女の声。

 そんな声を彼女でも出すのだと驚いた。

「無理してない? 気を遣っていたりしない?」

「しつこいな」

 彼女は口を噤む。しかし、僕をじっと見る。


「ありがとう」

 味とか見た目よりも、誰かが自分のために作ってくれたというのがその味をおいしいものに変えていた。

 それも、こんな不恰好に切るということは、調理も慣れておらずに、時間がかかったのだろう。
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