茉莉花の少女
 しかし、そう思っても僕の前に出現するのはそんな彼女とは似ても似つかない彼女だ。

 笹岡茉莉は笑顔を浮かべると、僕の顔を覗き込む。

「そっちのほうが似合っているよ」

 彼女は首をかしげる。

「何のこと?」

「今日、教室に行ったら先輩を見た」

「え? 私に会いに来てくれたの?」

 普通思っても言わないような事をあっさりと言ってくる。

「そうやって素直に笑っているほうがいいなって思っただけ」
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