茉莉花の少女
 でも、僕の前で笑うように顔を崩して笑うことはない。

 なんとなく仮面をかぶったような笑顔のように思えてきた。

 もっといつもみたいに笑えばいいのに。

「いつもあんな感じだよ。彼女はね」

 僕が何を言いたいのか分かったのだろう。

 彼女は笑顔でそう告げた。

 そのときチャイムが響き渡る。

 僕と林は教室に戻ることになった。

「茉莉先輩のイメージってどんな感じ?」

「可愛くて、綺麗で、成績優秀なんだけど、運動が苦手で、おとなしい人かな」

 彼女は階段をあがりながら、そう言った。

 今日、僕が見た彼女はまさしくそんな感じだったのかもしれない。
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