茉莉花の少女
 そして、その影をたどっていくと足にたどり着く。

 そのとき、誰かがここにいるのだと分かった。

「あ、お兄ちゃん、ただいま」

 その先にいたのは彼女とよく似た目をしていた男性だった。

 その整った顔立ちを見ていると、その言葉のとおり、彼女の兄だと分かった。

 顔立ちはあまり似ていないが、彼女の母親もそれなりに綺麗な人で、それぞれ違う親に似たのだと結論づける。

「紹介するね。彼氏の久司君」

 明るい口調で紹介されて、とりあえず頭をさげた。

 再び顔を上げた。

 彼と目が合うと、思わず後退してしまった。

 彼は鋭い眼差しでこちらを睨んでいたのだ。
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