ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
そして時刻は夜11時近くとなった頃、お風呂から出た私は濡れた髪を乾かしながら、浴室から自室へ向かい廊下を歩いていた。
まさか泊まっていくことになるなんて、どこまでもうちの家族のペースで申し訳ない…。
でも、青井くんがうちにいるって何だか不思議な気分。いつもと同じその姿も、会社で見るのとはまた違って見える気がする。
…あれ。
通りがかった和室は微かに戸が開いている。そういえば青井くんは和室に寝泊まりするんだっけ、そう思い出し何気なしに室内を覗き込んだ。
するとそこには、広い和室の端で月明かりの差し込む縁側に座り、風に当たる青井くんの姿。
『綺麗』。その感想が一番に込み上げる姿に思わずガタ、と戸の音をたててしまう。
「誰、」
「あっ、ごめん…えと、」
「……原さん」
こちらに気付き向けられた視線に慌てて言葉を繕おうとする私に、彼はシー、と人差し指を口の前に立てるポーズをしてみせると、目で部屋の真ん中を指す。
その視線の先には一人用の布団の端に眠る、彼方の姿があった。
青井くんに懐くうちにこっちで寝ちゃったんだ…。
彼方を起こさないように、私はそっと部屋に入りゆっくり戸を閉め、彼の隣へと近付いた。