愛を知らないあなたに
すっくと琥珀様が立ち上がった。


「お久しぶりです。ジンさん。」





いつの間にか。


あの白い、九つの尻尾をもった狐さんが、あたしたちを見ていた。




「あー!ジンじゃーん!おっひさしぶり~」


タマはジンさん?のところへすっ飛んで行った。



そして、その手触り良さそうな毛に、頬をすりすりさせ始めた。


か、可愛いっ!!!



けれどジンさんはあっさりタマをどかし。


あたしのところへ真っ直ぐ来た。





「生贄、話がある。少し、我についてきてほしい。」



ここに来て、初めて迎えた朝のときと同じような静かな声。


真っ直ぐな・・・何もかも見透かすかのような瞳が、あたしをしっかり捉えている。




『怖いもの知らず』


その言葉を思い出しながら、あたしはコクンと頷いた。


「分かった。」



確かに今のあたしは怖いもの知らずだな、と、かすかに思いながら。





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